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傷病手当金accident and sickness benefits




概要

プライベートの怪我や病気など私傷病で仕事ができなくなると、健康保険から所得補償として「傷病手当金」が支給されます。

民間の生命保険などで所得補償付きの商品が出ていますが、これの公的保険版です。大まかに言えば、月給の2/3が1年半支給されますので、最低限の所得補償としての安心感はあります。

今回は、この傷病手当金について記載します。

傷病手当金の支給要件

傷病手当金は、下記の条件全て満たす時に支給されます。

@健康保険に加入していること

 →会社に在籍している限り、健康保険の加入期間は問われません。
Aプライベート(仕事以外)の病気やケガで療養していること
B仕事が出来ないこと
C仕事ができないと医師が認めた後、連続する3日間を含み4日以上経過していること
D給料が支給されていないこと




労災との違い

傷病手当金は、仕事上での怪我や病気に対しては支給されません。あくまで仕事を離れたプライベートでの病気や怪我に対して支給されます。

例えば、休日に遊びに行った際に、怪我をして会社に行けなくなった場合などです。

これに対して、仕事上での怪我や病気の場合は労災から支給されます。全く扱いが違いますので、注意して下さい。

>>建設業の労災はこちら


支給額

傷病手当金の支給額は、ざっくり言えば、ボーナスを除く月給の2/3程度の額が毎月支給されます。

少し細かく言えば、支給額は標準報酬月額を元に算出されます。過去1年間の標準報酬月額の平均を算出して、その額を30で除した額の2/3が支給されます。

計算式では以下となります。

支給日額=過去1年間の標準報酬月額の平均÷30X2/3


「過去1年間の標準報酬月額の平均÷30」を算出した時点で10円未満を四捨五入します。その後、2/3をして1円未満は四捨五入します。

この様に算出した
支給日額を暦日分支給されます。土日祝祭日も含めた額になります。
31日の月は31日分、28日の月は28日分の支給です。

以上の計算で算出されますので、給与明細を単純に2/3した額と異なります。ただ、ざっくりとした額を知りたいときは給与明細から算出すると良いでしょう。

具体的な支給額は厚生労働省のホームページに掲載されています。

なお、「標準報酬月額」が分からない場合は、給与明細の健康保険料の額を標準報酬月額等級表から探すと分かります。


労務不能期間

傷病手当金は「労務不能期間」に支給されます。この「労務不能期間」は医師が診断して確定することになります。傷病手当金の支給申請書に医師の証明として記載しますので、自分勝手に設定することはできません。

傷病手当金の支給に際して、大変重要な項目です。

なお、初診日=労務不能期間の開始日ではありません。医師の診断を受けても、翌日から仕事をすることもあります。一般的に労務不能の開始日は会社に行けなくなった日(仕事ができなくなった日)ですから、入院日などとなります。

また、
医師は初診日以降の日付でないと労務不能日として認定できません。具合が悪くなって、有給休暇を使い家で数日休んだ後に、ようやく医者に行く時がありますが、これは要注意です。

なお、有給休暇が残っている場合は、有給休暇を消化した後で労務不能日を開始したり、有給休暇を消化し終わる3日前(次章参照)を労務不能日として診断してもらう方もいらっしゃいます。実務上、たまに見かける事があります。


待機期間

傷病手当金は、病気や怪我で働けなくなった初日(労務不能日)から支給されるわけではありません。労務不能日から3日間の待機期間を経てから傷病手当金が支給されます。最初の連続した3日間は支給されずに、4日目から支給される事になます。

これは、仕事ができない期間として
連続3日を待機期間とします。待機期間を経なければ傷病手当金は支給されません




なお、待機期間は有給休暇を使用しても問題ありません。


支給期間

傷病手当金は最長で1年6ヶ月支給されます。支給期間は、最初に労務不能となり支給された日から暦日でカウントします。

仕事ができるようになると「労務不能」ではありませんので、傷病手当金は支給されなくなります。

その後、
傷病が悪化して再度休職した場合には、最初に支給された日から1年6ヶ月で支給が終了します。



なお、支給期間中に簡易な作業をすることで給料が支給された場合は、原則として傷病手当金は支給されませんが、給与の額が傷病手当金よりも少ない場合は、その差額は支給されます。


退職後

傷病手当金は、退職後も受給することができます。しかし、その為には条件があります。

下記の2点をいずれも満たした場合に限り退職後も傷病手当金が支給されます。
@退職日前1年間に1日の漏れなく健康保険に加入していること
A退職日時点で既に傷病手当金を受給していること



社会保険の被保険者資格を持ち、同じ会社に継続して働いている場合は問題ありませんが、転職などで会社を替わった場合には注意が必要です。

会社が替わっても健康保険に漏れなく加入していれば問題ありませんが、退職日前1年間に転職前後で
1日でも空白期間、すなわち会社に所属していない期間があれば退職後は、傷病手当金が支給されません

退職月の社会保険料の支払いを避ける為に、
最終日よりも1日前に退職し、翌月1日から転職先に入社する人もいますが、これだと空白期間がありますので、退職後の傷病手当金は支給されません。

会社の人事担当者から「社会保険料が1ヶ月特をするから」と言われて1日前に退職する方もいらっしゃいますが、これは後で後悔する可能性があります。税金と違い健康保険や年金などは「保険」です。掛け金が多いほど、給付も多くなります。また、保険ですから支給要件を満たしている必要があります。

社会保険は「保険」であり「給付」があるということを、十分にご理解頂く必要があります。



また、協会けんぽから組合健保に替わっても、またその逆でも問題なく支給されます。

しかし、
国民健康保険、任意継続被保険者、共済組合の加入期間は除かれますので、退職日前1年間に国民健康保険の加入期間がある場合は支給されません。




退職を考えている場合は、退職前に雇用契約書や給与明細などで健康保険の加入期間を確認する必要があります。

転職をした場合は、過去1年間に、どの健康保険に加入していたかにより考え方が変わってきます。

退職後に別の健保に加入した場合は、「仕事ができている」状態だと言えますので、傷病手当金は支給されない状態だと言えます。
もちろん、休職前提での採用というのも理屈の上ではあるかも知れませんが、現実的にはないでしょう。


国民健康保険

国民健康保険には傷病手当金傷病手当金の制度がありません。この為、退職後の支給要件とされる1年間に国民健康保険が含まれていると、支給されません。


共済組合

公立学校の教職員の方などが加入している健康保険が共済組合です。共済組合には傷病手当金があります。しかし、本記事での傷病手当金とは異なりますので、退職後の支給要件とされる1年間に共済組合が含まれていると、支給されません。


有給休暇があれば使った方が良い

傷病手当金は労務不能で給与がでない場合に支給されます。この為、会社には出勤できない日になります。会社に出勤できませんので、@有給休暇かA欠勤のどちらかになります。

有給休暇ですと、給与は全額支給されますが、傷病手当金は標準報酬月額の2/3です。ざっくり言えば、ボーナスを除く月給の2/3程度が支給されることになります。

休職や欠勤の場合は、給与が支給されないだけでなく、欠勤に伴う人事評価の低下があります。いわゆる出世に響いたり、賞与の減額対象になります。

この為、有給休暇が残っている限りは有給休暇を使用した方が得になります。


傷病手当金を使うとき

入院などで長期に渡り会社に出勤できない場合などに傷病手当金を使用します。傷病手当金は、最長で1年6ヶ月支給されますので、大きな怪我や病気をした際に使用するのが良いでしょう。その際には、自社の休職規定も確認しておく必要があります。


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