メンタル不調者の復職判断judgment of return to work
概要
近年、うつ病や適応障害等の精神疾患で休職される方が増えております。
これに伴い、当然復職する時が来るのですが、この復職判断は企業にとって大変難しいものです。どの様な基準で判断すれば良いのでしょうか。
ここでは、精神疾患から復職する場合、企業としてどの様な過程を経て判断すれば良いのかを記載します。
医学的な判断はしない
まず、大前提ですが病気が治ったかどうか、ではなくて「復職して仕事ができるかどうか」、という基準で判断します。
うつ病などの「病気」が完治したかどうかでの判断ではありません。会社が医学的な判断をすることはできません。なので、医学的な判断は「しない」ということが基本となります。
例えば、高血圧の人はどうでしょうか。毎日高血圧の薬を服用しているが仕事には支障なく取り組んでいる方も多数いらっしゃいます。この様な方に対して「高血圧」であることを理由に休職を命じることはありませんよね。これと同じだと考えて下さい。
高血圧に限らず、様々な慢性疾患があります。年齢が高くなると痛風などにも罹患してきます。ちょうど部長職あたりの年齢から多くなる傾向があります。
会社は痛風の病状や処方された薬を細かく聞いて、休職命令を出すでしょうか?出しませんよね。
この考え方を「うつ病」などの精神疾患にも適用します。
精神疾患者へのヒアリング
精神疾患の従業員に対して、会社の人事部や上司が、薬の名称を聞いたり、よく眠れているかを聞いたりします。しかし、これは医師が聞く事であって、医学の素人である会社の者が聞くことではありません。
薬名を聞いてインターネットで検索して、なんとなく効果が分かる程度です。その程度の知識で何を判断できるのでしょうか。専門外の薬の作用が分かったところで、次に進みません。
それよりは、仕事人として自社の仕事を最も良く理解している上司、人事部として判断ができる分野である「仕事ができるのか」という点にに注力する必要があります。
診断書と復職判断
主治医、産業医への質問も「1日8時間の仕事ができるか否か」を明確に「Yes/No」で回答できる様式で準備します。
病院や医院が準備する自由フォーマットの診断書ではなく、会社がきちんとした診断書のテンプレートを作成して、それに記入してもらうことが重要です。
また、医師の書く診断書は、診察した日時での診断結果であり、未来に対する保証を与えているものではありません。医師の診断書で就業が問題ない、となっていても復職後数週間で、また休職してしまうこともあります。
この為、医師の診断書のみで判断するのではなく、きちんと会社として「仕事ができるかどうか」との基準で判断する必要があります。
復職させて、症状が再発したり悪化した場合は、会社の責任になることがあります。復職の可否を判断するのは会社であり、産業医や主治医ではありません。この点を強く意識することが重要です。
繰り返しになりますが、判断基準は「仕事が出来るのかどうか」です。
現職復帰
精神疾患からの復職時に休職前と同じ職場に復職させる「現職復帰」を原則としている会社があります。休職が会社の責任ではない、という立場である以上、「現職復帰」が原則として考えることができますが、実質的にパワハラ等が原因で休職した場合、「現職復帰」だと再発するのは当然と言えます。
責任の所在はさておき、復職した従業員の定着を考えると現職復帰の原則を見直す必要があると考えます。
建前論では、「異動を希望して休職する従業員が増えたらどうするんだ」ということになりますが、実際にそのようなことが起きるのでしょうか。
現実的な解を考えていく必要があると思います。
復職プログラム
復職プログラムなどもありますが、これは必須というわけではありません。リワークプログラムなども本人の状況を考えて受講の有無を決定するのが良いです。
まとめ
休職中の従業員の復職判断は大変難しいものがあります。会社にとったら、産業医や主治医に判断を任せたいと思うかも知れませんが、医師任せにせずに会社がしっかりと判断をする必要があります。
おすすめ記事