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休職届を受け取ってからの人事担当者の仕事leave of absence



概要

人事担当者から見れば、休職の相談はいきなり来るものです。メンタル不調にしても事前に分かることは少なく、ましては怪我などでは今日連絡がきて明日から休職します、となることもあります。

ここでは、近年多いメンタル不調者の休職につて、人事担当者目線からの手続き(作業)について記載します。

初めて休職者がでた時や、手続きを確認したい時などにご利用下さい。


全体フロー


人事担当者が休職の相談を受けてからの手続きは、下記の流れになります。


 【全体の流れ】
Step1)窓口担当者決め
Step2)主治医の診断書を取得
Step3)休職願いの受理、病状、本人の希望等の確認
Step4)有給休暇残日数、休職期間等を確認
Step5)雇用保険、健保、厚年の保険料振込口座の連絡
Step6)傷病手当金支給申請
Step7)復職可能との主治医の診断書を取得
Step8)復職願いの受理、病状、本人の希望等の確認
Step9)復職判断(必要に応じて産業医の受診、面談等)


次に、各Stepの詳細を説明していきます。


Step1)窓口担当者決め


休職してから、復職又は退職するまで、
1ヶ月に1度程度は、休職者と連絡を取る事になりますので、会社側の窓口(ご担当者)を決めます。

いわゆる「パワハラ」が原因で休職する場合は、上司や同じ部署の者が連絡をするのは避けるのが望ましいです。あまり面識のない人事担当者が窓口として話をするのが良いでしょう。

もちろん中小企業の場合であれば、人事担当者ではなく、社長が話を聞く事もあるでしょうが、それでも問題ありません。

いずれにしても、
休職者の上司や同僚などから、まずは詳しく話をお聞き下さい。


Step2) 主治医の診断書を取得

取り急ぎ、主治医の診断書と休職願いを提出してもらって下さい。その時に、必ずご本人と話をして状況を聞いて下さい。どの様な体調なのか、何ヶ月程度の休職を予定しているのか、原因は何か、主治医は何といっているのかなどです。

主治医の
診断書には、「病名」と「休職期間」を明記してもらって下さい。

普通に出勤したのが、いきなりメンタル不調で休職する様な場合では、正式な病名は「うつ病」ではなく、もっと軽度な「適応障害」とか「自立神経失調症」、「パニック障害」などだと思います。

いわゆる「うつ病」は大変重い病気で、症状次第では障害年金に該当します。要するに自分ひとりで生活ができないレベル、という事です。

もし本当に「うつ病」であれば、数ヶ月で復職できる可能性は凄く低いでしょう。年単位の休職期間になります。
就業規則等で定めている休職期間を超えて休ませる必要はありません。多くの会社が1ヶ月から6ヶ月程度、長くても1年だと思いますので、診断書の結果次第では、休職時点で退職を前提に考えておく事も必要になります。


ご本人から電話等で「うつと診断されたので休みます」とだけ言われた場合は、その
電話1本で休職させるのは大変危険です。
ご本人が嘘を付いている訳ではないと思いますが、「なぜ休職するのか」を会社として明確にする為に、診断書を取って病名を確認するのは必須です。


次に、休職期間ですが、初診では多くの場合は、診断書には1ヶ月から2ヶ月程が書かれます。
もちろん病状にもよりますが、軽度のうつ症状であれば、初診日に3ヶ月以上の休職診断を出す医師は少ないと思います。大抵は「薬を飲みながら少し様子を見ましょうか」とか、「残業をなくして勤務できますか?」とか、「差し当たり1ヶ月休職されますか?」等の会話になります。

この為、休職者が、「3ヶ月休職します」と意思表示されていのであれば、
主治医の診断とは異なる可能性があります。この点も、きちんと確認して下さい。

なお、診断書を取るのに3,000円程度の費用がかかりますが、これは会社が負担する必要はありません。私傷病という前提なので、法的には特に決まりがなく自由に決めて下さい。ほとんどの会社が従業員の個人負担としています。
休職者が出た時点でトラブルにならないように、事前に就業規則等で、きちんと決めておく事と良いでしょう。


Step3)休職願いの受理、病状、本人の希望等の確認


休職者に下記の点を中心に確認して下さい。
① 主治医の意見
② メンタル不調の原因、いつから具合が悪いのか
③ 休職期間含めて休職者の今後の希望
④ 復職の意志
⑤ 有給休暇、休職期間、傷病手当金、社会保険料等の手続きの話


休職者の主張や主治医の診断書に対して、疑問や納得のいかない事があれば、会社の指定する産業医の受診させることも可能です。
就業規則等で産業医の受診をすることを明記しておく事が望ましいですが、主治医は患者さんを治療することが仕事ですから、治療に役立つこと・患者さんのためになる事であれば、積極的に診断書に記載してきます。
そこで、
会社の仕事の内容もきちんと理解している産業医の意見も聞いて、総合的に判断することも必要になってきます。

産業医と言っても様々な先生がいらっしゃいます。メンタルヘルスの産業医をご専門にされている方もいらっしゃいますし、一方で産業医を依頼しても「医師会からの紹介でなければ受けられない」という医師もいます。
市区町村によっては、医師会からの紹介以外で個別に産業医を受けれはいけない、との取り決めがある地域がある様です。

手間がかかりますが、産業医の選任は慎重に行う必要があります。


Step4)有給休暇残日数、休職期間等を確認

有給休暇の付与日数は多くの会社では、勤続年数に依存しています。例えば入社1年目だと有給休暇がないか、もしくはが最大10日だと思いますので、2週間程度で有給休暇がなくなってしまいます。有給休暇がなくなると休職になります。

休職期間は就業規則等で規定されていますので、確認して下さい。休職期間は会社の体力や考え方により大きく異なります。一般的に何ヶ月程度ということはできません。

もし、就業規則がなかったり休職期間が規定されていないのであれば、休職者が出る前に早急に規定しておく必要があります。

休職期間も
「何が原因で休職するのか」により異なる規定になっている事が多いです。今回の例ですと「メンタル不調による休職」が就業規則の、どの条文に該当するのかを、きちんと確認しておく必要があります。

この期間を過ぎても復職できなければ自然退職となります。要するに、
就業規則等で規定されている休休職期間を過ぎれば、自動的に「休職期間満了に伴う自然退職」となります。

メンタル不調であれば、3ヶ月で復職できるかは半々くらいだと思います。

一般的に2ヶ月から3ヶ月での復職が「ゴールデン期間」と言われ、この期間に復職できれば、その後も安定して勤務できる可能性が非常に高くなります。
しかし、3ヶ月を超えると復職が一気に困難になります。1年以上復職できないことも良くあります。また、休職期間が長期になると、1日8時間の仕事をこなす体力と精神力が喪失しますので、リハビリ勤務が必要になってしまいます。

いずれにしても、月1回はコンタクトを取って状況の確認と、休職期間更新の為に主治医の診断をもらって下さい。


なお、
就業規則等で定めている休職期間を過ぎた場合に、退職させずに特別に休職期間を延長することは避けるべきです。
安易に休職期間を延長してしまうと、実際に辞めて欲しいと思った時に、理由がなくなってしまいます。日本の法律では解雇は非常に困難になっておりますし、解雇すると助成金の受給などで制限を受けることになります。

心身の不調による離職の場合、「特定理由離職者」として失業手当が優遇される可能性もありますので、その点を話して会社の規定にそって例外を作らずに処理を進めて頂くのが良いと思います。


Step6)傷病手当金

傷病手当金は、休職を開始すると支給されます。傷病手当金は、主治医から労務不能日の証明をしてもらった後に支給されます。3日間の待機が完了した後から傷病手当金が支給されます。

ただし、有給休暇等で会社から給料が支給されている日は傷病手当金が支給されませんので、実際には休職に入ってから(会社から給料が支給されない休職期間中)の支給になります。

傷病手当金の申請には主治医の証明と会社の証明が必要です。給料の締め日に合わせて毎月申請するのが良いでしょう。また3ヶ月分を1回で申請することも可能です。この辺りは休職者の希望を聞いて相談して下さい。

なお、休職者の在籍期間が休職期間中に1年を超える場合であっても、休職期間満了で退職されたら傷病手当金は支給され続けます。この為、復職できなくてもゆっくり療養して頂けると思います。





Step8)復職願い

診断書記載の休職期間の終了が近づくと、休職期間を延期するか、復職するかを決める事になります。この時は、休職期間の終了に再度主治医の診断を受けて、休職期間を延長するか、復職を希望するのかを決めてもらいます。

延長する場合は、その都度主治医の診断書を提出してもらって下さい。


Step9)復職判断(必要に応じて産業医の受診、面談等)

復職を希望される場合は、まずは主治医から「復職可能」との診断書を提出してもらいます。必要に応じて会社指定の医師(産業医など)の受診を命じる事もできます。
ここで重要な事は、
主治医の復職可能の診断書が出たからと言って、会社がそれに従う義務はない、という点です。

休職者を復職させるかどうかの決定権は主治医にはありません。もちろん産業医にもありません。要するに医師の診断書には、その様な権限は一切ない、という事です。

医師の診断書とは、診察した時点での医師の診断結果であり、将来に渡って仕事ができることを保証するものではありません。また、主治医は、「患者を治療することが職務」です。この為、「復職した方が本人とって有益」と判断すれば、復職可能の診断書を作成します。これは、「仕事ができる」とイコールではありません。

結果的に、主治医の判断と会社の判断が、異なる事は当然に起き得えます。この場合は、産業医の意見を聞いた上で、会社が復職可否の判断を下します。

もちろん、仕事ができないと会社が判断すれば、休職命令を出して休職を継続させることも可能です。雇用契約には残業をする事も義務として明記されていますし、就業規則もベストな状態での就労を義務づけています。

毎日不完全な状態での就労しかできないのであれば、休職者は債務不履行となりますので、会社は不完全な労務提供を拒否することが可能です。
結果的に休職期間が延長され、期間満了日による自然退職となることもあります。


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