評定者トレーニングappraisal_training
概要
人事考課を行う上で、人事考課実施する側、即ち評価をする側(管理職)の教育は大変重要です。
人事制度を作る所までは、一部の担当者や人事部門のみで構築することができますが、実際に運用する際には全管理職に人事制度・人事考課について、共通認識を持たせる必要があります。
管理職(以下、評定者)に徹底的に「人事考課のやり方」を教育し「全社共通」にすることが最重要です。
今回は、評定者向けの教育をどの様に実施するのかを概観していきます。
人事考課の目的
人事考課の目的は下記の2種類となります。
人事考課の目的
重要なのは人事考課は人材育成だ、ということです。この点を履き違えて「人が人の優越を付けること」と思っている管理職がいますが、これは大きな間違いです。
人事考課の基本は「人材育成」です。ここにフォーカスして十分な時間をかける必要があります。
もちろん昇格・昇給という点も重要です。公平性の観点からも、従業員数がある程度の規模になると、人事考課を実施しなければ給料や役職を決める際に公平性がなくなります。こうなると、「えこひいき」人事に写ってしまい、従業員のモチベーションが大きく低下します。
昇進や昇給を、経営者の感覚的なものや、従業員が辞めた時など都度対応していると従業員間のアンバランスが広がってしまい、いずれ軌道修正ができなくなります。
言葉の定義
管理職=評定者とします。管理職の下に部下がいて、その部下の人事考課をする為の考え方やテクニックを紹介します。
人事考課は管理職の重要な職務
多く管理職が、「人を評価するのが苦手で嫌だ」と感じると思います。この為、「人事考課などしている時間がない」といって、人事考課業務を避けたがる管理職もいます。
しかし、人事考課は人の優越と順位付けをする為ではなく、人材育成です。
管理職は、組織の成果=管理職の成果となりますので、組織の業績を上げるための部下の育成は重要な職務となります。人材育成という観点で見れば人事考課は管理職の必須業務と言えます。
この点を十分に理解して人事考課に取り組んで下さい。
人事考課もPDCAサイクル
人材育成という視点から人事考課を見ると、人事考課もPDCAサイクルになります。
P(Plan) :仕事の割当(目標設定)
D(DO) :部下の実務(仕事の実施)
C(CHECK) :実務内容のチェック(人事考課)
A(ACTION):改善指示(面談)
P(Plan) :仕事の割当(目標設定)
これは、日々管理職が実施していることです。部下への仕事の割当がP(Plan)になります。これは人事考課としては「目標の設定」に該当します。
D(DO) :部下の実務(仕事の実施)
これは、仕事を割当てられた部下の実務部分です。
報連相をきちんと行いながら進めていきます。
C(CHECK) :実務内容のチェック(人事考課)
これは部下が行った仕事内容のチェック、確認です。これもほとんど上司の方が日々実施されている事だと思います。
A(ACTION):改善指示(面談)
この部分が人材育成のコアになります。日頃から1仕事完了すれば労いの言葉などをかけると思います。この様な言葉やアドバイスがモチベーションを向上させ、仕事に前向きな姿勢を生みます。
人事考課後の面談は、この日常の対応を少し丁寧に行い、今後の目標などを相談する場だと捉えて下さい。
評価範囲
人事考課では、人間的な性格の部分やプライベートな部分は評価対象としません。仕事に関連する部分(業務遂行能力)のみを評価します。
多くの企業で採用されている評価軸は、下記の3分野です。
@業績(成果)
A能力
B人間性
評価期間
決められた評価期間内のみで評価します。
例えば入社して10年目の従業員であれば、どうしても10年間の総合評価的になりがちです。特に大きな成功や失敗のイメージが残り、それに引きずられて評価してしまうことがあります。
これを避け、「人事考課の対象期間(例えば1年間)」内での評価として、徹底する必要があります。
管理職に対して評価者研修を定期的に開催するなどが必要になります。
評価基準
会社で統一された基準で評価します。自分勝手な基準で評価してはいけません。
職能資格制度や職務資格程度などを導入されている企業では、既に全社共通の評価基準があると思いますので、それに皆が合わせて人事考課を行います。
まだ本格的な人事制度が導入されておらず明確な基準がない会社でも、人事考課を実施する前には、評価基準を作成する必要があります。
数ヶ月もかかるような本格的なものでなくても、良いのです。
社是や社訓、事業計画や方針から、欲しい人材を定義すれば基準が作れます。
部門間の調整
従業員数が50人程度までであれば社長が一人で全てを把握できるので、部門間の不公平は実施的に生じないでしょう。
しかし、それ以上になると評価者により評価結果にバラツキがでるので、それを全社で調整る場(例えば人材委員会)などを設置して調整する必要があります。
ポイントは下記となります。
@評価そのものは自分で決める。
A部門間の調整は別途実施する。
B将来期待を評価に入れない。
能力評価のポイント
能力とは、仕事を行う上で必要な能力を保持しているかどうかを判断します。あくまで能力の保持を判断すのであって、能力を使ったかどうか、ではありません。
この為、評価期間の最後で能力が上がれば、その上がった能力で評価することになります。期間中の平均値ではないので注意して下さい。
公的資格の取得などは、能力と評価して良いと思います。どの様に評価するかは、原則としては会社が決めるものです。
業績評価のポイント
業績とは、売上額などの数値で表現できるものです。同じカテゴリに成果というのがあります。人事部など業績を上げにくい部門では成果として評価します。
業績の評価は、評価期間中の平均値で算出します。
社外の要因による業績悪化は、個人業績に含めることは避けるのが一般的です。
人間性(態度)評価のポイント
態度とは、いわゆる「やる気」だと考えて下さい。遅刻の有無や勤務態度など情意と呼ばれている部分です。服装や身だしなみなども含めても良いです。
パワハラやセクハラなどのハラスメントを起こしやす態度や性格などは、ここで評価します。人に不快感を与える、話をすると悪口しか言わない、やる気をなくすものの言い方しかしない、などです。
特に管理職になる上では大変重要な評価ポイントになります。
この態度も、平均値で評価します。評価期間の前半に遅刻が多くあり、後半で全く遅刻がなかった場合、平均するので皆勤の従業員よりも評価は悪くなります。
近年は、パワハラなどのハラスメントを繰り返すような性格の持ち主であれば、昇進させることはできません。性格というより、態度と言ったほうが良いと思います。
有給休暇の取得により評価を下げることは違法とはなりません。もちろん、有給休暇の取得を拒否することはできません。申請された場合は、よほどの理由がなければ時季変更もできません。
しかし、会社の繁忙期になると常に数日の休暇を取る、などして事業運営に悪影響を与えた場合は、評価を下げる事は問題ありません。
人事考課で気を付ける点
人事考課をする際に、気を付ける点として下記の5点があります。
@ハロー効果
1点の良かった点、悪かった点のみで、その人を評価してはいけません。
A寛大化傾向
Aランクの高評価に偏ることです。5段階評価であれば、バランスを取って評価することが必要です。
B中心化傾向
日本人は元来大きな差を付けるのを好みません。この為、評価も「普通」に集まりがちになります。
寛大化傾向と中心化傾向を避けるために、A評価をトップ5%等、各評価の枠を決める事もあります
C論理的関連付け
これは、評価項目に自分で関連付けをして、「これがAなら、論理的に、こちらもAになるはず」と考えて評価することです。
例えば、遅刻をする=性格的にだらしない=服装が乱れている=言葉使いが雑などと関連を付けていって「遅刻をした」だけで多くの評価項目がマイナスになる様な場合です。
評定者が自分勝手に評価項目の関連付けをしてはいけません。
D自分基準
過去の自分と比較して評価をしてしまうことです。「俺が20代の頃は…」などです。
また、誰かの悪口を聞くと、実際とは違っていても、そう思ってしまう傾向が人間にはあります。噂話を安易に評価に入れることがあってはいけません。
まとめ
今回は、基本的な部分を中心に説明しました。
人事評価は人材育成を目的としています。人事制度・賃金制度自体が、そもそも人材育成の制度なのです。会社を大きくして安定した収益を上げるには従業員の成長が必須です。
会社として人事評価に十分な時間と労力を割きながら人材育成をしていくことが必要です。
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