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年5日の有給休暇取得義務Obligation to acquire 5 days paid vacation



年間5日の有給休暇取得義務

法改正により2019年4月1日から、中小企業を含む全ての企業において、年間10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して年間5日以上の有給休暇を取得させる義務が発生します。

有給休暇とは本来、従業員が自由に自分の意志で取得できるものです。この為、有給休暇を取得しない自由もあります。

ただ、有給休暇の取得率が低いため、法律で最低限の取得日を決めた、という事になります。


年5日の取得に向けて

風邪などで年間1〜2日程度は休暇を取得するこが多いと思いますし、プライベートな用事でも1〜2日程度取得するでしょう。こう考えますと年間5日の有給休暇取得は多くの方が既に達成できていると思います。

しかし、中には有給休暇取得0日という方もいらっしゃいます。この様な方に注意が必要になってきます。従来は、「有給休暇が0日」というのが武勇伝として語られる時代もありました。しかし、現在では「5日以上取得しなければ罰則がある」時代に変わっています。この意識の切替を特に50代以上に方にして頂く必要があります。

働き方改革は政府が主導している感はありますが、実際に20代(30代)の若手は自分の時間を大切にします。ワーク・ライフ・バランスをきちんと取れる職場でないと、離職率が高くなる可能性がありますので、これからは有給休暇の取得日数にも注意を払う必要があります。

差し当たり、全従業員の過去2年間程度の有給休暇取得を一覧にして確認するのが良いでしょう。
部門単位に取得率をグラフ化してみると部門別なバラツキが見えやすくなりますので、そのグラフに残業時間、離職率を重ね合わせるのも良いでしょう。


年5日の起算日

2019年4月1日以降の有給休暇付与日が起算日になります。この日から1年間で5日の取得が義務付けられます。

10月1日に有給休暇が付与される場合は翌年の9月30日までに5日を取得する必要があります。


有給休暇の申請書・管理簿

年間5日の有給休暇の取得が義務化した事で、有給休暇の申請書や管理簿にも工夫が必要です。

有給休暇の申請書は各社様々ですが、大きく分類すると1回1枚の用紙で申請する個別申請型と1年で1枚の一覧型が存在します。

(個別型イメージ) (一覧型イメージ)


個別申請型ですと、別途、有給休暇管理簿が必要になります。また、従業員も会社も残日数が直ぐに分からない、という欠点があります。

これに対して、一覧型では、1年で1枚の申請用紙(1回1行に記載)ですから、有給残日数も見たら直ぐに分かります。有給休暇は1年単位ですから1年1枚というのは、やはり管理が容易になります。

有給休暇の残日数が直ぐに分かりますので申請者本人も調整し易いですし、上司も管理が容易になります。人事部門も給与計算時に多くの申請書を確認し直す必要がありません。

以上の様に、個別申請型よりも一覧型が優れていると思います。労務管理コストを抑えたい全企業に最適と言えます。

今回の法改正で必須となる5日間の有給休暇は、この一覧型の申請書の上部に記載しておくのが良いでしょう。



この様にしておくと、5日間が特別である旨が一目で分かりますし、基準日の時点で計画を入れておく事ができます。


計画的付与との関係

有給休暇は労使協定で取得日を定める「計画的付与」ができます。この計画的付与も取得義務の5日に含める事ができます。

ただし、年末年始など従来は会社の休日だった日を就業規則を変更して出勤日とし、この日を計画的付与日にするというのは、不利益変更になりますので、特別な理由があるか、従業員の個別合意が必要になります。

今回の法改正を機に計画的付与を導入するのであれば、従来の年末年始休業や夏期休業に1〜2日程度追加して休業日を増やす方法が良いでしょう。


就業規則の規定例

有給休暇の取得方法は法改正により下記の3種類となりました。
@労働者からの時季指定
A計画的付与(労使協定必要)
B会社からの時季指定


従来は@とAのみでした。しかし今回の法改正により「B会社からの時季指定」が出来るようになりました。

ただ、これは@Aにより年間5日が達成できない場合に労働者の意見を尊重して時季指定することになります。

基本的には、従来通り労働者の意志により有給休暇を取得することになります。

この点を踏まえて就業規則に規定を追加するのが良いでしょう。以下参考案です。

【追加案】
有給休暇付与日数が10日以上の者は、付与日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得すること。
なお、基準日の30日前の時点で年間5日の有給休暇取得が達成できていない場合は、取得時季を会社が指定することがある。


罰則

年間5日の有給休暇を取得させる義務が企業に課せられる訳ですが、罰則もあります。もし、取得できなければ、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。これは企業に課せられる罰則です。取得しなかった従業員に対しては罰則ありません。

罰金刑まで行くことは稀だと思いますが、年5日の取得は「企業に対する義務」という事です。


まとめ

今回の記事は有給休暇の5日付与についてですが、全般的に生産性向上(効率化)とワーク・ライフ・バランス、という考え方が重要になっています。

近年、入社3年以内の離職率が大変高い傾向にあります。法律ができたから5日だけ有給休暇を取得させるという考え方ではなく、積極的に有給休暇の取得率を向上させ生産性を向上させる働き方を考えていくのが良いですね。

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