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本支店間の移動時間は労働時間?Movement between headquarters

Movement between headquarters is not working hours?

本支店間の移動時間は労働時間?駅弁食べてても仕事中!?

概要

働き方改革で、労働時間とそうでない時間を厳密に分けよう企業が増えています。残業時間を減らして効率を上げていく、というのは当然の流れですが、「そもそも仕事をしていない時間まで労働時間としてカウントしているのではないか」、という現実があります。

今回は、「
定時内(勤務時間中)の事業所間移動は労働時間として扱わう必要があるのか」、という問題を考えてみます。


本店から支店への移動時間

今回の議題となる「出勤して仕事を開始し、その後、支店や取引先、現場などへの移動」はビジネスの現場では、日常的に発生しています。

この様な定時内の事業所間の移動時間は、実際には多くの企業で「原則として労働時間」として扱われています。

今回は、この「原則として労働時間」との扱いを
移動時間に何をしているのかを明確にして、労働時間と休憩時間に分けましょう、という話になります。

例えば、資材等を運搬しているのであれば労働時間になりますが、何もせずに電車に乗ってウトウトしていたり、スマホでゲームをしている時間も労働時間になるのか、という問題です。

この点においても、一般的には「労働時間である」との回答が多いと思います。しかし、本当に労働時間として良いのかという事を以下で具体的に見ていきます。


労働時間である、との主張根拠

多くの(半数近く?)の労務管理・労働法の専門家が、「移動時間は労働時間である」と回答すると思います。その主張根拠は下記になります。

これらは、具体的に筆者が聞いたり議論した内容です。

@会社指示で出張に行っているので、業務命令になるので仕事時間になる。
A訪問介護ではA宅からB宅への移動時間も労働時間と厚生労働省のリーフレットに書いてあるから、同様に考えて労働時間になる。
Bトラックの指導員は運転していないが労働時間になるので、同様に考えて労働時間になる。
C新幹線などの車内にいるのは、それだけで拘束時間なので労働時間になる。
D事業所間の移動時間を労働時間にしないような会社には人が集まらない。


など。

ここでは、
移動時間=休憩時間になる具体例を見ていきます。

具体的な事例

では、具体的な事例を見ていきます。大阪にある会社に出勤した後で東京支店に移動する場合です。

(時間が分かる円チャート図)

8:00〜17:00までが勤務時間、12:00〜13:00までがお昼休みの会社で考えます。

8:00に出勤して少しオフィースで仕事をした後、11:00から新幹線に乗り東京に向います。3時間後の14:00に東京駅に到着します。

この間の3時間は仕事(即ち労働時間)でしょうか?それとも労働時間にはならないのでしょうか。


以下、具体的な従業員の動きを見ながら考えていきます。

 11:00  新幹線に乗って指定席に座ると、スマホを見ます。LINEを見て家族などに(会社への報告ではなくプライベート)、「今から東京に行くよ」と送信します。
 11:05  電車が動き出したら、一息ついてスマホでゲームを始めました。
(スマホゲームの絵)
 11:45  ゲームに疲れたので目を綴じたら寝てしまいました。
(寝てる絵)
 12:30  社内アナウンスで目が覚める。たまたま車内販売が来たので、弁当を買って食べた
(お弁当食べてる絵)
 13:00  再びスマホでゲームをする。(スマホゲームの絵)
13:30  週刊誌を見ながらウトウトする。
(雑誌を読んでいる絵)
14:00 東京駅着 

如何でしょうか。この3時間は、全く仕事をしていません。果たしてこれで労働時間と言えるでしょうか...

もし、この3時間が労働時間になるのであれば、下記の様な矛盾点が発生してきます。

まず、就業規則上の昼休みとなっている12:00〜13:00までを考えてみます。この間も労働時間になるのか、といえばなりません
休憩時間です

12:00~13:00までは睡眠とお弁当を食べています。この時間は仕事と全く関係のない事(休憩)をしていますので、業務にはなりません。

電車で移動中はお昼休みの時間に昼食を取っていても、「移動中は仕事時間」という原則だけで、労働時間になるのは論理的ではありません。

また、
「電車内にいる」という事が拘束されていることを示すので、「労働時間である」、との意見もありましたが、場所的に拘束されているというだけでは仕事時間にはなりません
工場などは昼休みに構外に出れない会社もありますが、これも昼休みとして認められています工場の構内で仕事を離れて自由にできていれば休憩時間となります。これと同じ考えですね。

新幹線での移動中は昼休みを取れない、という考え方が許されるのであれば、会社がお昼休みを取らせていないことになり、会社は違法行為をしていることになります。

この結果、お昼休みを挟む移動はできなくなり、業務に著しい支障をきたします。世間一般なビジネスのやり方や考え方と大きく乖離しており、普通の企業にとっては受け入れ難いことだと思います。

この例では、12:00〜13:00は休憩時間として扱うのが自然です。


次に、お昼休み前後の時間について考えてみます。

11:45には寝ており、11:59と12:00では何も違いがありません。仕事をしないで新幹線の中で寝ているのに11:45から12:00までは仕事中、12:00になった瞬間から休憩時間、という考え方には不自然です。

仕事中か休憩中かは就業規則により決められるものではありません。「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより決まる」ものです。


これは、「三菱重工業長崎造船所 最一小判平12.3.9 民集54-3-801)から下記の様に示されています。
 労基法32条のいう労働時間(「労基法上の労働時間」)は、客観的にみて、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより決まる。就業規則や労働協約、労働契約等で、特定の行為(実作業のための準備行為など)を労働時間に含めないと定めても、これらの規定には左右されない。労基法上の労働時間は、就業規則に定められた所定労働時間とは必ずしも一致しない。

この様に考えますと、スマホゲーム、昼寝、昼食、週刊誌を見てウトウト、が業務命令なのか、指揮命令下になると言えるのが、が問題です。

例えば、通常のオフィースで仕事をしていても、一服したりプライベートのメールを見たり、時にはこっそりと銀行などに行くこともあるかも知れません。この時間は仕事ではなく休憩時間になります。厳密に勤怠を付けていないだけで、日常的に仕事をしていない時間は発生しています。

それが3時間というまとまった時間で発生した、と考えれば良いのです。

以上から、本例では業務中の移動時間は全て休憩時間になる、と言えます。


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訪問介護事業者

訪問介護事業者が次の介護宅へ車で向かっている間が仕事時間になるというのは、「訪問」という性格上、理解できます。

ただ、厚生労働省のリーフレットには、次の訪問先に着いても、介護するまでに休憩時間があれば、その時間を休憩時間とする事は認められています。
要するに、会社を出て、介護先を回って帰社するまでの全ての時間が労働時間になる、とは言っていません。

休憩しているのであれば、「休憩時間」になります。


トラックの運転指導員

トラック運転手の指導員が、隣に乗車してる時は運転していないが労働時間になるので、ただ電車に乗車しているだけでも労働時間になる、と主張された方がいらっしゃいました。

これは、通常の例えばホワイトカラーの方が新幹線に乗っているのとは訳が違います。

トラック運転手の指導員は、運転していなくても指導している訳ですから、立派な仕事です。
外科医が執刀しないけど手術室に入っているのと同じ状態です。この様な状況は多々あり、「ただの移動」とは明確に区別されるべきです。


電車内で拘束されている

電車内=拘束されている→休憩時間ではない、という考えも間違いです。
そもそも通達で、昼休みに構外に出れないという制限があっても構内で自由に過ごせれば休憩時間と認める、という内容が出ています。
この為、電車内という拘束化にあるので、休憩ではない、という考えは無理があります。


移動時間は待機時間ではない

移動中に会社の携帯を持っていたら、待機時間になるので労働時間だ、との意見もあります。

ただし、「会社の電話を持っていっる」、というだけで労働時間となりません。近年は、内線と外線が一体となった機種もあり、会社では内線、帰宅時は持って帰って外線、という会社もあります。
またBYODで、自分の携帯を仕事で使用している会社もあります。この為、近年では、「会社から着信の可能性のある電話を持っている」だけで「待機時間」と考えることは現実的ではありません。

なお、「電話当番」は昼休み中でも労働時間になります。これは明確な「当番」です。ローテーション等で順番が決められて従業員が持ち回りで担当します。


実務での対応

前章までの内容を踏まえた上で、実務での対応は下記とするのが良いと思います。

移動時間は、労働時間(仕事中)か休憩時間のいずれかになります。

その上で、
移動時間中に仕事をしていたら労働時間、仕事をしていなければ休憩時間と考えます。

出勤や移動が多く、移動時間を除くと所定労働時間に満たない様な場合は、所定労働時間働いたとみなすのが良いでしょう。

移動時間で仕事をしていない時間を休憩時間として正確に計上した方が、実態を正確に把握でき、労働時間としても問題ない場合は、その様に扱うのが良いでしょう。

を超える場合は、実態に合わせて計上するのが良いと思います。

まずは、出勤簿で移動時間を明確に記録するようにしましょう。その上で、従業員が休憩している時は、その旨申請してもらいます。


まとめ

本稿の内容は難しいところもありますので、車内で規程類を含めて十分な検討が必要です。


お問合せ&ご質問

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関連記事






参考事例等

海外出張の場合、例えば14時間程のロングフライトもありますが、これも労働時間にはなりません。

フライト中全て労働時間とすると、休憩なしとなり問題です。残業代も必要になってきますし、時差の関係で勤怠が難しくなります。

下記の判例をご紹介しておきます。

 外国に出張した従業員の時間外手当の計算にあたって、会社が「移動時間は実勤務時間ではない」として計算に含めなかったことに対して、従業員が時間外手当を請求したケース
 【判決】移動時間は労働拘束性の程度が低く、これが実労働時間に当たると解釈するのは困難であることから、直ちに所定就業時間内における移動時間が時間外手当の支給対象となる実勤務時間に当たるとの解釈を導き出すことはできない。(横河電機事件 東京地裁平6.9.27判決)

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