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傷病手当金と失業保険(基本手当)



傷病手当金と失業保険(基本手当)

概要

病気や怪我で会社を退職した時に、次の就職先が見つかるまでの社会保障について解説します。

今回は下記のモデルで説明します。

事例

会社に正社員として10年在籍しており社会保障や雇用保険にも入社時から加入している。勤続10年目のある日、病気で働けなくなり、健康保険の傷病手当金を受給しながら休職していた。
しかし、就業規則の休職規定により休職後6ヶ月で自然退職となった。



この場合、健康保険の加入期間が1年以上で退職時に傷病手当金を受給していることから、退職後も傷病手当金を継続して受給することができます。

ただし、傷病手当金を受給している間は、ハローワークから支給される失業保険(雇用保険の基本手当)は受給することができません。

これは、傷病手当金を受給している、ということは病気や怪我などで「労務不能」な状態にあると言うことで、雇用保険が支給される「失業」状態とは認められない為です。

雇用保険法で規定されている「失業」とは以下の状態です。

雇用保険法の「失業」定義

【雇用保険法第4条3項】
「失業」とは、被保険者が離職し、
労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。

【行政手引51202】
労働の意思とは、
就職しようとする積極的な意思をいう。 すなわち、安定所に出頭して求職の申込みを行うのはもちろんのこと、受給資格者自らも積極的に求職活動を行っている場合に労働の意思ありとするものである。。

【行政手引51203】
労働の能力とは、労働(雇用労働)に従事し、その対価を得て自己の生活に資し得る
精神的・肉体的及び環境上の能力をいうのであり、受給資格者の労働能力は、安定所において本人の体力、知力、技能、経歴、生活環境等を総合してその有無を判断するものである。


上記の従いますと病気療養中は、失業保険が支給される「失業」状態とは認定されません。従って失業保険は支給されません。

今回は、病気療養中で傷病手当金を受給中から失業保険を受給中するまでの流れを説明します。

世間で言われている
「失業保険」とは、雇用保険の求職者給付の中にある「基本手当」の事です。この為以下では、失業保険の事を「基本手当」という表記で統一します。


病気による退職

病気で会社に行けなくなった場合、傷病手当金を受給しながら休職することになりますが、どの程度の期間休めるのか、会社をクビになってしまうのか、などの扱いは会社の就業規則によります。

要するに会社により扱いが異なる事になりますので、自社の規程を確認する必要があります。


もし、会社の就業規則に病気になった時の扱いが何も記載されていなければ、有給休暇後に欠勤扱いになり、そのまま欠勤状態のまま会社に在籍し続ける事になります。

今回の記事とは論点が違いますが、病気や怪我で会社に来れなくなった従業員の扱いを明確に規定しておく必要があります。
例えば解雇するにしても、解雇理由が必要になります。この辺りのルールがきちんと就業規則に記載さている事が必要です。
就業規則


休職期間満了に伴う自然退職後の場合

病気や怪我で会社を休職していた者が、休職期間を満了した場合、復職できなければ自然退職とするのが一般的だと思います。もちろん就業規則で規定しておく必要があります。
(関連記事≫就業規則

ここでは自然退職になった場合の流れを記載します。

退職時に離職票を会社から本人に渡します。治癒後に基本手当を受給する際に必要になります。

また、休職期間満了通知、退職通知書を会社から本人に渡します。同時に退職合意書も双方で合意して作成しておくのが良いでしょう。


治療中は傷病手当金

休職期間満了で自然退職になった場合、退職時点では療養中ですから継続して傷病手当金を受給することになります。
傷病手当金は受給開始から1年6ヶ月間受給できます。会社を退職しても受給は継続できますので、まずは治癒させることを目指します。


治癒後の求職活動

病気や怪我が治ってから求職活動を始める事になります。雇用保険の基本手当を受け取るには求職活動ができる事、即ち雇用保険法に規定されている「失業」状態であると認定されることが必要です。

治癒して仕事ができる状態になると健康保険の傷病手当金が支給されなくなります。医師による労務不能の証明がなくなった状態です。

この状態から求職活動ができますので、ハローワークで手続きをすると基本手当が支給されます。

即ち、傷病手当金と基本手当は同時に受給できません。傷病手当金の受給が終わってから(病気が治ってから)、基本手当の支給が開始されます。





基本手当の受給期間延長

基本手当の受給期間は、原則として退職日の翌日から1年間となります。この期間しか基本手当は支給されません。
この為、傷病手当金を受給していると、1年を経過してしまうことがあります。

そこで、基本手当の受給開始を延期する手続きをします。延長できる期間は最長3年間です。

離職日の翌日から起算すると、通常1年間+延長3年間=最長4年間延長が可能となります。

受給期間を延長するには、「受給期間延長申請書」をハローワークに提出します。提出するのは、
退職日の翌日から30日経過した後、となります。退職後直ぐに申請することはできません。

これは、受給期間の延長には、一定期間求職活動ができなかったという実績が必要だからです。

また、申請時には医師の診断書が必要になります。なお、本記事の様に傷病手当金を受給している場合には、傷病手当金支給申請にある医師の診断ページを添付することで診断書の代わりとできます。


特定理由離職者

通常の自己都合と違い、病気による退職の場合、特定理由離職者となります。
これは、下記のいずれの場合にも該当します。
@病気による休職期間満了に伴う自然退職
A病気による自己都合

なお、個々の事案としては、退職時の状況などにより変わる場合がありますので、ハローワークに詳細はお問合せ下さい。

特定理由離職者になると、
待機期間7日は必要ですが、3ヶ月間の給付制限はありませんので、直ぐに受給することができます。定年退職と同じ扱いになりますので、給付制限はありません。


実際に求職者給付を受ける時

基本手当の受給を病気や怪我などで延長していた場合、求職活動を行うに際して医師の診断書が必要となります。これは、働けることを証明した診断書となり、基本手当の支給申請時に添付します。


雇用保険の傷病手当

雇用保険にも傷病手当がありますが、これは求職の申込み後に(求職活動中に)、病気や怪我などで働けなくなった場合に支給されるものです。
健康保険の傷病手当金とは別物になりますので、注意して下さい。

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