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退職合意書retirement_agreement


退職合意書

概要

従業員が会社を辞める際の手続きは色々とあり、その中には社会保険の喪失届けなどの法的に義務付られているものが多々あります。

一方で、法的に義務付けられていませんが、「やっておくべき」手続きもあります。
今回は、この中の1つである「退職合意書」について記載します。

これは、
入社時に書く雇用契約書の退職時版のようなものだと思って下さい。


目的

近年、労使間でのトラブル、特に個人の従業員と会社との間での揉め事が増えています。いわゆる個別労働紛争、と呼ばれているものです。

その中でも多いのが未払残業代など、賃金に関するものです。

例えば、この未払い残業代は、実際には従業員が退職した後で請求されること多くあります。もちろん、実際に未払残業代がある場合には、当然支給する必要があります。

ただ、実際には未払残業代がない場合でも、支払いを要求されることがあります。
実際には2週間程度で辞めた従業員から、数十万円の残業代の支払い要求が来ることもあります。

こうなった場合は、弁護士に依頼して解決するのですが、100%会社の勝ち、というのは難しいのが現実です。

このような例以外にも、退職に際してのトラブルは後をたちません。

そこで、
退職した元従業員との間でのトラブルを未然に防ぐ為に、「退職合意書」を締結します。


退職合意書の必要性

退職合意書は労使双方にメリットがあります。

会社にとってのメリットは、やはり未払い残業代などの名目で後から金銭を請求されるのを防ぐ事です。もちろん、実際に未払いの賃金などがあってはいけませんが、本来ないはずの未払いの賃金を請求されることもあります。

「退職合意書」があったからといって絶対に請求されないということはありませんが、「労使双方に金銭の債権債務がない」と明文化された合意書にサインをしている以上、よほどの事がない限り争いになっても有利になります。

一方で、辞める従業員のメリットは、辞めた後で退職金がいつ振込まれるのか、いくらなのかが分からない、というぼんやりした状態を防ぐことができます。また、本来存在しない会社からの借り入れの精算や損害賠償請求などを避けることができます。

このように、
従業員の退職後によく揉める「お金の問題」にきちんとけりを付けて綺麗に退職することが重要です。

もし労使双方納得できない項目がれば、そこで話し合う事ができますので、その時間を持ち認識を合わせることができるというのもメリットです。

退職合意書に記載すべき事項

@賃金債権債務の有無
退職月の給与や、賞与、退職金などの実際の額を明記します。
賞与や退職金は、揉める事があります。
賞与は支給日在籍条項があれば、退職日以降に賞与支給日があれば、支給する必要はありません。この点を十分に理解してもらう必要があります。
また、退職金は就業規則や雇用契約書に支給しない旨が明記されていても、要求してくる従業員もいますので、不支給の場合でも、きちんと支給しない旨を明記します。

A退職理由
自己都合なのか、退職勧奨なのか、など実際に離職票に記載される文言のまま記載します。離職理由は、従業員からすれば、失業保険の額に直結します。
上記の@と同じお金に関する項目なので、明記して後々もめない様にします。

B守秘義務と特許
業務上知り得た営業秘密だけではなく、特許や著作権の所属が会社にあることも明記しておきます。

C競業避止義務
これは、従業員が退職した後で、隣に同業店を出店された、などの問題を避けるものです。従業員は、会社で働いている間は、同業種を自分で経営したり、協業他社に雇用されたりできないという「競業避止義務」を負っているとされています。
ただし、退職した後では、この「競業避止義務」はありません。

しかし、現実問題として、同じ町内で同業店を出店されると顧客を取られたりする為、大きな問題が発生します。

そこで、「退職後1年間は当社営業エリア内で同業種を出店しない」など合意を取付けます。

もちろん、実際に競合店を出店する為に辞める従業員は納得できないでしょうし、あまりに長期間、広範囲での競合営業を禁止するのも現実的ではありません。

ただ、自社の正当な利益を守る為にも、きちんとした競業避止義務条項を入れておきましょう。


合意書の押印手続き

まず、退職合意書とは何なのか、どの様な目的で何が記載されているのかを、時間をかけてきちんと従業員へ説明することが重要です。

この退職合意書は、債権債務などが難しい用語(法律用語)で記載することが大半です。

この為、いきなりなんの説明もなく「退職合意書」だけを渡され、押印を依頼すると、従業員さんは相当警戒します。これは当然の反応です。退職手続きの中で、退職合意書の意味と記載内容をきちんと説明し、理解してもらうことが必要です。

内容が十分に理解できずに(されずに)押印をしても、後からトラブルになった際に「錯誤による無効」を主張される可能性があります。

労使双方で十分な時間をかけてきちんと話をして、綺麗な形で退職することが大変重要です。


退職合意書のイメージ

退職合意書は、2〜3ページ程度です。労使方法で記名押印して完成となります。


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