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1年単位の変形労働時間制〜時間制限〜Working time limit


概要

1日の所定労働時間を変化させることができる変形労働時間制の中に、「1年単位の変形労働制」があります。

この制度は、
1年単位で平均して1週の労働時間が40時間以下になるようにすれば所定労働時間を変化させることができます

ただし、
全く自由に所定労働時間を決めれるわけではありません。そこには各種制約があります

今回は、1年単位の変形労働時間制を導入する際の、主に時間外労働に関する制約について解説します。


残業時間の上限

1年単位の変形労働制の場合、1日の労働時間の上限が10時間となっております。この為、1日の所定労働時間が8時間の場合、残業できるのは2時間までとなります。

この為、「時間外・休日労働の協定届」の1日の延長時間は2時間が最大となります。

通常、1年単位の変形労働時間制を採用すると、1日の所定労働時間が変化します。6時間の日もあれば9時間の日もあります。
この様に考えると1日6時間の日は4時間まで残業ができることになりますので、「時間外・休日労働の協定届」に記載する「1日の延長時間」は、2時間以上の場合もあります。

1年単位の変形労働時間制をどの様に運用されているかで記載する数字が変わってきますので、自社の制度運用を確認して下さい。

同様に
1週間の労働時間の上限も52時間という制限がありますので、所定労働時間が8時間の場合、1週間の残業時間の上限は12時間となります。こちらもご注意下さい。

1年変形の各種制限

1年単位の変形労働時間制を採用する場合、労働時間に下記の制限があります。

 制限項目 制限値 
 1日の労働時間  10時間(残業時間2時間(※1))
 1週間の労働時間  52時間(残業時間12時間(※1))
 1ヶ月の残業時間  42時間
 1年の残業時間  320時間
 1年の労働日数  280日
※1)1日の所定労働時間を8時間とした場合。

1ヶ月及び1年の残業時間の上限は厚生労働省の基準によります。これに対して、1日及び1週間の総労働時間の上限は労働基準法によります。

この様に、上限値も何によって規定されているかが異なりますので複数の情報を統合的に判断する必要があります。

二重の制約

前章に記載しましたとおり、1年単位の変形労働制は、下記の2種類の制約を受けることになります。
@労働時間の制約
A時間外・休日労働の上限時間の制約


この制約の中でシフト表を作成することになります。

なお、「時間外・休日労働の協定届」も1年変形だけは別欄になっていますので記入時にも注意が必要です。

1年単位の変形労働時間制度の時間外

1年単位の変形労働時間制度の残業時間(残業代を支給する対象)は下記となります。
@1日8時間を超える所定労働時間の日は、その所定労働時間を超える時間
A1日8時間未満の所定労働時間の日は、8時間を超える時間
B1週40時間を超える所定労働時間の週は、その所定労働時間を超えた時間
C1週40時間未満の所定労働時間の週は、40時間を超えた時間
D1年で週40時間を超えた部分で上記@〜Dを除く時間

まとめ

1年単位の変形労働時間制は、この記事に記載している時間制限以外にも多くの決まりがあり、複雑です。きちんと運用するのは結構難しいものです。

1年単位の変形労働時間制は、中小企業で多く導入されておりますが、実際には他の労働時間制で十分な場合もあります。一度自社の運用ルールを洗い直して頂き、最適な労働時間制での運用を進めて下さい。


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