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残業代の間違いと給与計算overtime wages and payroll calculation




概要

きっかけは残業代の間違いから始まる!、ということが良く(稀に!?)あります。

実際問題として、「給与計算の間違い」は、その大部分が「残業代の計算間違い」です。

実は、給与計算を外部委託していても、その委託先が間違いを指摘してくれないことが多々るようです。
そうすると、かなりの期間、給与計算が間違えたままとなっています。

初めてお仕事をさせていただく際に、賃金台帳を見せてもらうと、なぜこの様な給与計算になっているのか疑問に思う(どうやっても計算が合わない)会社も多数あります。

社労士事務所系以外で給与計算をされている所は、「残業代の間違い修正なんか簡単でしょ。」と思われている所があります。

もちろん、計算自体は簡単です。四則演算ですから時給×1.25などをすれば金額自体は算出されます。

でも、これだければ駄目なのです。

1.未払いの賃金が発生していることになります、その賃金をどうしますか?
2.これから、人件費の負担増になります、会社として耐えられますか?
3.従業員の皆さんに何と説明して、どの様に理解して頂きますか?
4.社会保険や労働保険などの過不足はどう対処しますか?

など、残業代の間違い=労働法違反 という認識を持つ必要があります。

社労士系以外で給与計算をされている事務所や会社では、労働法にまで踏み込んでお客様に提案されない(できない)ことが多いので、

残業代の間違いを訂正するのは
大変な作業になります。

そもそも、残業代の計算はどの様な労働時間制を採用しているかによって異なっています。変形労働時間制を採用していない会社と1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している会社では残業代の計算式の複雑さが全く違ってきます。

この為、どの労働時間制を採用しているのかをはっきりさせてから、順を追って再計算していくことになります。

ここでは、未払残業代があると判明した後、賃金規定を修正し安定した給与体系の元に運用できるまでの道筋を記載します。

未払い残業代の修正と賃金規定修正までの流れ

大きくは下記の手順となります。
@未払残業代の計算と支払い
A賃金規定(就業規則)の修正
B従業員への説明会&合意
C雇用契約の再締結

ざっと見ても、労務管理に関する部分が大半を締めます。この為、給与計算を受けている会社(事務所)が、労務管理の専門でない場合、間違いに気づかなかったり、気づいていても修正を提案してこない場合があります。

例えば、「社長、給与計算間違えていますよ」と指摘すると、
「じゃー正しくして下さい」と言われます。
「これが正しい結果です」と出すと、
「給料が増えてるじゃないですか、こんな額出せません!」と言われることがあります。

この為、残業代の間違いを正しく修正して、きちんとした給与計算に持っていくのは大変な労力と時間がかかる作業になります。

社長はわざと残業代を払ってないのではなくて、給与計算の方法が分かっていないだけなのです。人件費の総額は把握されているので、その枠内で払っている、とうのが現実だと思います。

間違いを指摘するのは良いですが、人件費の総額が大きく変わると経営を直撃することがあります。今までは、給与計算の方法を知らないで外部に委託していたけど、委託先も間違いを指摘しなかった(できなかった)という状態が続いていたのです。

ここでは、どの様な手順で正常な状態に持っていくのかを順を追って解説します。


未払残業代の支払い

賃金債権の時効は2年間なので、従業員は会社に2年分の未払残業代の請求をすることができます。
ただし、2年分だと高額になり過ぎて会社の支払い能力を超えるような場合もあり、この様な場合は従業員と相談の上、遡及する期間を決めることもあります。
もちろん、会社が勝手に遡及する期間や金額を決めることはできません。十分な話合いが必要になります。


賃金規定(就業規則)の修正

残業代を計算した結果、残業代が高額になり過ぎて経営が立ち行かなくなる場合もあります。
また、業界平均と比べて高額の給料を支払っており、これ以上の人件費の増額に耐えられない場合もあります。
この様な場合は、従業員に対して十分な説明をした上で、賃金規定(就業規則)変更する場合もあります。
賃金規定(就業規則)を変更する場合は、その内容が従業員に不利益になる場合は、きちんと説明し従業員の同意を得る必要があります。


雇用契約の再締結

賃金規定を見直し場合、雇用契約をきちんと再締結し、皆が納得できる労働条件にする必要があります。


一大プロジェクトになる...

残業代の計算間違い、というだけでも、きちんと対応するには上記の通り、一大プロジェクトになります。

残業代の計算間違いを、小手先だけで直すのではなく、本来あるべき姿にする為に、「賃金設計」をきちんとやり直す、ということが重要になります。

未払いの残業代をチョコチョコと計算して辻褄を合わせるのではなくて、永続的に企業として存続し得る様に、きちんと賃金設計をすること、従業員が高いモチベーションで働ける様に、納得感と公平感のある賃金設計をすること、が何よりも重要です。


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